2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小谷➂ 嫁いではじめての気ぜわしい年の瀬。 気ぜわしいのに小の月に当たり大晦日の前日二十八日の朝から絶え間なく雪が降り続き北近江でも珍しいほどの大雪になった。 永禄十年(1567)一月一日。 白い静寂に包まれ新たな元旦の明けやらぬ闇。 暗闇の中すっ…

小谷④ お屠蘇の会 永禄十年(1567)正月三日。 暮れからの雪は降り続き止み間は二日の一日だけで三日も雪になった。 二日に止んだのはお市の方の我侭が通ったのか? 花嫁のお披露目を兼ねた館の大広間には浅井の三将(赤尾清綱、海北綱親、雨森清貞)をはじめ…

余呉湖① 姫屋敷の庭に佇んでとりとめもなく思い出しているお徳。 永禄十年(1567)春三月。 館の裏庭でもあった馬場にこの姫屋敷は建てられた そこに咲いていた多種多様な桜木のほとんどが姫屋敷を建てるために切られ、生き延びた何本かの姥桜が塀越しにあざ…

琵琶湖永禄十年(1567)秋八月十三日。 お日様が後から頭を覗かせた早朝 ちょっと色付き始め見事に生え揃つた稲穂を左右に、琵琶湖に行く道を、汗を拭き拭き股ずれを気にしながら歩いている夏太りのお福。 並んで歩いている細身のお菊も朝日が当たり汗がうっ…

十三夜 同年同月同日 昼を過ぎ、貸し切り状態の緒上荘にいずれも徒歩で孫右衛門と長政が姿を見せた。遅れて久政がちょっと立ち寄った風情でこちらも徒歩で顔を出した。 いずれも供はわずかだった。そして 夕刻前に仕事を済ませた市之介がお徳を連れ仲良く到…

姫屋敷① 永禄十年(1567)秋八月二十三日。 予定よりちょっと遅れて無事女子を出産した。 その三日後、 稲葉山攻撃の応援に市之介と共に一千の兵を連れ出陣していた長政が夕刻帰ってきた。 清めの塩で迎えたお菊のうりざね顔がやや丸っこくなっている。 「お…