元亀二年(1571)

春二月。

自分が生んだ、のどのつぶれた赤子が潮に引かれ、迷路のような水路をゆらゆらと流れていく光景に憧れていた川内の子華子は無事男児を出産した。

秋九月。

織田勢が比叡山延暦寺とその門前町坂本を焼き討つ。

同じ頃。

紫宸殿をはじめ禁中修理の大工事が二年越しに完了。

同じ頃。

皇室をはじめ公家衆の基盤を安定させるために皇室領などから集めた米を京の町衆に

貸し付け、その利足で経営を賄うという新たな試みを二人の若い財吏が始めた。